第五章 らしくない

17/17
前へ
/198ページ
次へ
 普段なら、早くテストが明けてほしい、堂々とあの子たちと戯れたいとしか思っていないところなのだけど……。  クリスマスイブ当日まで、王子先輩と顔を合わせずにすむ。その事実に、ほっとしているような自分がいた。  会いたくないわけじゃない。  むしろ、さびしいような気もする。  そんなことを考えるぐらい、先輩の存在は、私の中で当たり前になってしまっていた。  だけど、今はそれ以上に、どんな顔をして会えば良いのかわからないという落ち着かないような気持ち。早くきてほしいような、永遠にやってこないでほしいような。  自分でも、もてあましてしまうこんな気持ちは、初めてだ。  先輩と出かける日のことを考えると、そわそわとしてしまうので、目の前にテスト勉強という熱中すべきものがある状況はありがたかった。  でも、あえて全力で勉強に意識を注ぐようにしていたからなのか、あっというまにテストは明けてしまい。  問題のその日は、思っていたよりも、はやくやってきた。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加