第六章 ドキドキのクリスマスイブ

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 いや、王子先輩が格好良いことなんて、前々から分かってはいたけれど……。初めて見る私服姿が、想像の十倍も格好良かったから、つい呆けてしまった。 「やっぱり、彼女と待ち合わせとかかなぁ」 「あれだけ格好良くて、クリスマスイブに独り身ってのは考えづらいしねぇ。あんな人の彼女なんて、いったいどんな美人?」  先輩は、黒いマフラーに半分ほど顔をうずめるようにして、携帯をもてあそんでいる。顔の抜けるような白さがきわだっていた。  改札を通り抜けるのも忘れて見入っていたら、彼は周囲を見渡して、ため息を吐いた。  いけない。  先輩があまりにも人目を引いているから、怖気づいてしまったけれど。  彼の待ちあわせ相手は、あくまでも私なのだ。 「先輩! お待たせしました」  小走りで向かってきた私の姿を認めると、先輩は無邪気に笑った。 「羽鳥さん! 良かった、ちゃんと来てくれて」 「失礼な。私は約束を破るような人間ではないです」 「考えてみれば、それもそうか」
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