第六章 ドキドキのクリスマスイブ

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 先輩は今にも鼻唄を歌いだしそうなぐらい上機嫌。  私はといえば、先ほどから周囲の視線が刺さるようで痛い。さしづめ、『えっ。あんな地味な子が待ち合わせ相手なの?』とでも思われているのだろう。 「羽鳥さんの顔を見るの、久しぶりな気がするな。不思議だね。一週間ぐらいしか経っていないのに」 「あぁ、分かる気がします。私も同じことを思っていました」 「うそ! ほんとに!?」 「えっ? そ、そんなに、驚くことです?」 「うん。そっかぁ、羽鳥さんもそう思ってくれていたんだね」 「いや。やっぱり、気のせいだったかも」 「ええっ! 羽鳥さんのいけず!」 「いけずって言葉、日常生活で使う人がいるんですね。ほら。無駄口をたたいていないで、はやく行きますよ」  最近、先輩と一緒にいると恥ずかしさが勝ってしまって、どうしても素直になれない。  照れを隠すように、早く目的地に向かおうと足を踏み出したら。  さっそく、急いでいた通りがかりの人にぶつかりそうになった。 「危ないよ、羽鳥さん」  とっさに先輩から腕を引き寄せられて、なんとかセーフ。
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