第六章 ドキドキのクリスマスイブ

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 珍妙な生き物展は、中々の人気を博していて、けっこうな数の人が並んでいた。クリスマスイブだからか、カップルらしき人々が多い気がする。  チケットの列にならぼうとしたら、先輩が「もう買ってあるから、並ばなくて大丈夫だよ」と二人分の入場手続きをあっさりとすませてしまった。  おお、なんという手際の良さ。 「ありがとうございます。お金は後で払わせてください」 「あー、気にしないで。今日は僕から誘ったわけだし」 「でも……。先輩の大切なお小遣いを、こんな形で使わせるわけには」 「僕、夏に短期集中でバイトをしてたんだ。これは一応、僕が稼いだお金になるから、使いたいように使わせて」  そうまで言われてしまうと、断るのも違うような気がしてくる。 「先輩がそうしたいというのなら、良いですけど。ありがとうございます。このご恩は、いつか必ずお返しします」 「ふはっ。羽鳥さん、おーげさすぎ」  ここまでそつがないなんて、やっぱり遊び慣れているのでは?  ますます疑惑が深まっていく。 「……さすがは、先輩ですね」 「聞き捨てならないんだけど、それはどういう意味?」 「べつに。こっちの話です」  やっぱり別世界にいる人なんだと感じたことまで、話す義理はないもんね。
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