第六章 ドキドキのクリスマスイブ

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「そろそろ帰ろうか。暗くなってきたし、明日も学校だから」 「あっ。……はい」  本当に、あっという間だったな。  ここに来る前は、正直、不安な気持ちもあった。  だけど、過ごした時間は、夢のように楽しくて。  王子先輩が、私と珍妙な生き物展に一緒に行きたいと思ってくれたことに、あらためて心から感謝したかった。  隣を歩く彼は、館内を歩いていた時より落ち着きを取り戻しているものの、変わらず穏やかな表情を浮かべている。無言だけど、話さなくちゃいけないという焦りもない。  やさしい時間。  昼間に待ち合わせをした駅が見えてきた時、胸に揺らぎが生まれた。  もうすぐ、この時間が終わってしまう。 「うそ! もしかして、王子くん!?」  !?  どこかで聞き覚えのあるその声に、体が硬直する。
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