第一章 恋とは一生縁がないのだろう

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「うふふー。佳奈はあたしに抜けられたら嫌だって。メガネ、残念だったねぇ」 「クソッ。新しい部員が入った暁には、坂本くんなんていつでもお役御免なんだからな!」  るりとメガネくんは、どうにもそりが合わないらしく、いつも喧嘩ばかりしている。だけど、これも生物室の日常の一コマという感じだ。 「佳奈~」  かめきちの餌やりを終えて、メダカたちの餌やりをしていたら、るりが飼い主に甘える猫のように私の方へすりよってきた。 「んー?」 「飽きた。折角の文化祭なのに、このまま終わるなんて嫌だっ!」 「そうかな。私としては、このまま誰も来なければ、この子たちを愛でることに専念できて嬉しいんだけど」 「だからぁ、それじゃ、いつもの活動と変わらないでしょ!? はぁ。真ちゃ……原先生も、顧問のくせにまったく顔を出しにこないしさ」  メガネくんもいる手前、いちおう真ちゃん呼びは憚ったらしい。ほとんど隠せていないけれど。 「もおお、会いにこないなら、こっちから探しにいってやるし! 佳奈! ここはメガネに任せて、校内を探索するよ!」 「え……?」  餌に吸い寄せられてきたメダカたちを眺めていたら、頭をグワシッと掴まれる感触。  見上げれば、この退屈な場所から抜け出したくてウズウズしている、るり。 「というわけで、メガネ。留守番は頼んだよ!」 「おおおおおい! ボクは許可してないぞぉ!!」  背中にメガネくんの悲鳴を浴びながら、るりに腕を引かれて、生物室の外へ。  一度こうだと思った親友は、誰にも止められないのだ。
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