45人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
「うふふー。佳奈はあたしに抜けられたら嫌だって。メガネ、残念だったねぇ」
「クソッ。新しい部員が入った暁には、坂本くんなんていつでもお役御免なんだからな!」
るりとメガネくんは、どうにもそりが合わないらしく、いつも喧嘩ばかりしている。だけど、これも生物室の日常の一コマという感じだ。
「佳奈~」
かめきちの餌やりを終えて、メダカたちの餌やりをしていたら、るりが飼い主に甘える猫のように私の方へすりよってきた。
「んー?」
「飽きた。折角の文化祭なのに、このまま終わるなんて嫌だっ!」
「そうかな。私としては、このまま誰も来なければ、この子たちを愛でることに専念できて嬉しいんだけど」
「だからぁ、それじゃ、いつもの活動と変わらないでしょ!? はぁ。真ちゃ……原先生も、顧問のくせにまったく顔を出しにこないしさ」
メガネくんもいる手前、いちおう真ちゃん呼びは憚ったらしい。ほとんど隠せていないけれど。
「もおお、会いにこないなら、こっちから探しにいってやるし! 佳奈! ここはメガネに任せて、校内を探索するよ!」
「え……?」
餌に吸い寄せられてきたメダカたちを眺めていたら、頭をグワシッと掴まれる感触。
見上げれば、この退屈な場所から抜け出したくてウズウズしている、るり。
「というわけで、メガネ。留守番は頼んだよ!」
「おおおおおい! ボクは許可してないぞぉ!!」
背中にメガネくんの悲鳴を浴びながら、るりに腕を引かれて、生物室の外へ。
一度こうだと思った親友は、誰にも止められないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!