第六章 ドキドキのクリスマスイブ

15/23
前へ
/198ページ
次へ
 顔をあげれば、目の前に、意志の強そうな瞳を丸くした美人が立っていた。  首周りにあったかそうなファーのついたモカ色のコート。黒いセーターにチェックのタータンスカートというフェミニンなかっこうを完璧に着こなしている彼女は、他でもない。  学校内で、いつも王子先輩のそばにいる、あの人。  白鳥先輩だ! 「どこかに出かけていたの? あれ? 隣にいるその子は……」  彼女の注意が、王子先輩の半歩後ろに立っていた私の方に向けられて。その瞳に明確な憎しみの炎が宿った瞬間、全身にぞわりと鳥肌が立った。  どうしよう。 「王子くん。まさかとは思うけど――」  ――その子と、出かけていたわけではないよね? たまたま会っただけなんでしょう?  言われるより前に、その言葉の先を予想できてしまった。  身体の芯から凍りついていく。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加