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顔をあげれば、目の前に、意志の強そうな瞳を丸くした美人が立っていた。
首周りにあったかそうなファーのついたモカ色のコート。黒いセーターにチェックのタータンスカートというフェミニンなかっこうを完璧に着こなしている彼女は、他でもない。
学校内で、いつも王子先輩のそばにいる、あの人。
白鳥先輩だ!
「どこかに出かけていたの? あれ? 隣にいるその子は……」
彼女の注意が、王子先輩の半歩後ろに立っていた私の方に向けられて。その瞳に明確な憎しみの炎が宿った瞬間、全身にぞわりと鳥肌が立った。
どうしよう。
「王子くん。まさかとは思うけど――」
――その子と、出かけていたわけではないよね? たまたま会っただけなんでしょう?
言われるより前に、その言葉の先を予想できてしまった。
身体の芯から凍りついていく。
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