第六章 ドキドキのクリスマスイブ

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 恥ずかしい。  恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。  真っ先に頭によぎったのは、明日、どんな恐ろしい噂が学校に流れるのかということだ。 「っ、その通りです。ただ、たまたま、そこで会っただけです!」  二人がなにか言葉を発する前に、地面を蹴り、全速力で逃げ出した。  自分のことは、この際、どうでも良かった。  私が悪く言われる分にはかまわない。  でも、王子先輩に、みじめな思いをしてほしくはなかった。  だって彼は、あきれるほどやさしい人だから。  みんなに愛されて然るべき素敵な人だって、痛いほど知ってしまったから。  言われなくても、わかるんだ。  先輩は、私なんかの隣を歩くべき人じゃないってこと。
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