間章その3 王子さまはご機嫌斜め

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 授業中も休み時間も、心ここに在らず。  やけに時計の針の進みが遅いような気がしたけれど、やっと放課後になった。  あからさまに不機嫌オーラを全開にしていたからか、今日は珍しく誰にも絡まれなかったな。その分、遠巻きには眺められていたが、この際、気にしていられない。  羽鳥さんに、会いたい。  とにかく、それだけ。  それでも、念のために、いつもの作法にならうことにする。  放課後、少しだけ時間をつぶしてから昇降口を出て、はやる気持ちで生物室の裏口の扉をノックした。 「どうぞ」  出迎えてくれたのは、羽鳥さんではなく、その親友の坂本さんだった。  部屋を見渡した限り、羽鳥さんの姿はない。 「ええと……羽鳥さんは?」 「今日は早退しましたよ、体調不良です。ちなみに今日はメガネも塾で来れないので、あたしが餌やりを託されました」 「体調不良……?」  背中に、嫌な汗がにじむ。
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