間章その3 王子さまはご機嫌斜め

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 絶句している僕に、彼女は淡々と、残酷な事実を突きつける。 「今朝も、下駄箱に蛙を入れられていたんです。佳奈は、あなたに対して特別な感情はないと言っていました。これ以上、佳奈と関わろうとするのはやめてください。彼女を傷つけることにしかなりません」  痛い。痛いよ。  鋭いナイフで胸を抉られたら、こんな感じかもな。  坂本さんの言っていることは、嘘ではないのだろう。  彼女は羽鳥さんの親友だもの。  傍から見ていても、大好きなんだって伝わってくる。  そんな坂本さんが、羽鳥さんのためにならないことをするわけがない。つまり、今の言葉は、言いづらいけれども口にした真実。 「そっか……」  僕の初恋は、完全に、一方通行なものだったらしい。
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