間章その3 王子さまはご機嫌斜め

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「失恋? えっ。例の前に言っていた子に?」  力なくうなずくと、原先生は「王子が失恋……? 待て待て、お前を振る女子なんて、この世に存在すんの? ウソだろ、信じらんねーんだけど」とぼやいていた。  噂のことは、さすがに、教師にまでは届いていなかったらしい。そんなことは、なんの慰めにもならないけれど。 「……完膚なきまでに失恋しました。少しは、同じように想っていてくれたら良いなぁなんて思っていたことが、バカみたいです。僕は、彼女に迷惑しかかけていなかったんですよ」 「それは、なんつーか……ご愁傷さま」  原先生は気まずそうに立ち上がると、教室を出ていってしまった。  ……先生にまで、見捨てられた。  まぁ、失恋して愚痴っている男なんて、ただ面倒くさいだけだよな。  救いようもないほどに、酷い失恋だし。
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