間章その3 王子さまはご機嫌斜め

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 鬱々とした思考回路にはまり、世界の全てを呪いたいような気持ちになってきたら、先生がいそいそと教室に戻ってきた。 「……僕が帰らないと困るから、早く帰れと言いにきたんですか?」 「俺はそこまで鬼ではねーよ。とりあえず、これでも飲んで元気を出せ」  机の上に置かれたのは、ホットココア。  校内の自販機で買えるやつだ。 「あー……なんか、気を遣わせてしまって、すみません」 「大したことしてねーし。っつーか、お前はまだまだガキなんだから、こーゆー時ぐらいは素直に人に甘えてろ」 「ありがとうございます」  口にしたココアは甘くて、干上がった身体にしみわたるようだった。 「失恋か。なんにせよ、好きな相手に想いが届かないっつーのはキツいよな」
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