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窓の外、冬の校庭に視線をやりながら、先生はぽつりと呟いた。
「応えてやりたいのに、立場上それはまずくて。そのくせ、他の相手と幸せになるのはゆるせねー。俺、最低なんだよな」
返事を求めているわけではなさそうだと思ったから、黙っていた。
「ま、俺もおいそれと人には言えねーような、みっともない恋愛してるんだよ。これ、ひみつな」
「はぁ、そうですか」
「おい。せめて、もう少しぐらいは興味を示せよ……と言いたいところだけど、今のお前に、そんな余裕はねーか。なんつーか、うまいことを言えなくてごめんな」
しょんぼりと眉尻を下げた原先生を見ていたら、冷えきった心が少しだけあたたまった。
「いえ。先生なりに、元気づけようとしてくれているのは、伝わってきましたよ。ありがとうございます、もう帰りますね」
もう一度、ホットココアに口をつける。
今は、苦しくて仕方がないけれど、羽鳥さんの本心を知ってしまった以上、もう迷惑はかけていられない。
人前で泣いて醜態をさらすのは、もう、これで終わりだ。
腹をくくろう。
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