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「えっとー、これって何の列ですか?」
るりが、並んでいた先輩女子たちに尋ねると、彼女たちは「「それはもちろん、王子くんの執事姿目当てだよ~!」」と瞳を輝かせた。
「王子くんの執事姿があまりに麗しくて、バド部の子が鼻血をふいたって噂!」
「うっそぉ、楽しみすぎ! っていうか、お客さんの半分以上が他校の女子っぽいよねぇ。さすが、王子くんだわ。星燐高校内にとどまらないイケメンぶり!」
「もはや、国宝級だよね~。はああん、早く順番こないかなぁ」
きゃぴきゃぴと盛り上がる女の子たちを前にして、心が無になっていく。
ええっと……王子先輩を一目見るためだけに一時間も並ぶの?
「なるほど、この行列は真ちゃんのクラスだったのか……。そして王子先輩効果ね、納得だわ」
るりも、納得しちゃうのか。
私には、まったくわからない。
王子先輩は、たしかにイケメンだとは思う。
でも、だからなに?
鑑賞するのなら、生物室のあの子たちの方がよっぽど楽しい。
だけど、これだけ多くの人が集まっているということは、整っている容姿には一般的にそれだけの価値があるのだろう。……やっぱり私は、ちょっとズレているのかも。
「王子先輩の執事姿か、あたしもちょっと興味あるなぁ」
「私はパス。先に生物室に帰るわ」
「わー、ごめんごめん! 並ばないよ、冗談だってば!」
るりは、真顔になってしまった私の背中を押しながら、並んでいる女の子たちに会釈した。
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