第七章 わかってしまった

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「にしても、あんな見るからに純情そうな子をもてあそぶなんて、王子も酷なことをするよねぇ。本気になっちゃったら、かわいそーじゃん」 「まー、王子くんは前々から、誰かを特別にする気はないって公言してるしね~。ってか、一回遊んでもらえただけでも、バリ羨ましいんだけど」  やっぱり。  先輩は、私のことをなんとも思っていなかったんだ。  わかりきっていたはずなのに、想像以上に動揺している自分がいた。  なんて、自分勝手なんだろう。  彼は、私と特別な仲なのだと広まるほど困るのだから、これで良かったはずなのに。平静ではいられないほどショックを受けているなんて。  胸が、痛い。  私にも心があったことをこんな形で知るなんて、皮肉なものだ。こんなに辛いのなら、本当に、心なんてなければ良かった。  恋なんて、一生、知りたくもなかった。  最後の登校日、王子先輩が生物室に顔を出すことはなかった。  メガネくんとるりが、先輩のことには触れず、いつも通りくだらない会話をしてくれたことだけが救いだった。
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