第七章 わかってしまった

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 光陰矢の如しというけれど、冬休みが明けるのもあっという間だった。年始をはさむから親戚との顔を合わせもあるし、そもそも休み自体が短いもんね。  学校に行く。  ただそれだけのことに、ここまで緊張している理由は一つしかない。  もしかしたら、王子先輩の姿を見かけるかもしれないからだ。  ずいぶんと長い間、彼と会っていないような気がした。  同じ学校に通っているのだし、先輩はとにかく目立つ人だから、遠くから目にする機会はあると思うけれど。  もう、他愛のない話をしたり、笑い合ったりすることはないんだろうな。 『うん。あんなに生き生きとしている羽鳥さんを見るのは、初めてだったし。君が楽しんでくれたことがいちばん嬉しかった』  ふと思い出してしまうたびに、どうやってすんなりと呼吸をしていたのかを忘れる。  先輩の言葉は、全てがでたらめで、一つたりとも本心はなかったのかな。  そんな軽い言葉に、私の心は、揺らされていたのかな。
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