45人が本棚に入れています
本棚に追加
光陰矢の如しというけれど、冬休みが明けるのもあっという間だった。年始をはさむから親戚との顔を合わせもあるし、そもそも休み自体が短いもんね。
学校に行く。
ただそれだけのことに、ここまで緊張している理由は一つしかない。
もしかしたら、王子先輩の姿を見かけるかもしれないからだ。
ずいぶんと長い間、彼と会っていないような気がした。
同じ学校に通っているのだし、先輩はとにかく目立つ人だから、遠くから目にする機会はあると思うけれど。
もう、他愛のない話をしたり、笑い合ったりすることはないんだろうな。
『うん。あんなに生き生きとしている羽鳥さんを見るのは、初めてだったし。君が楽しんでくれたことがいちばん嬉しかった』
ふと思い出してしまうたびに、どうやってすんなりと呼吸をしていたのかを忘れる。
先輩の言葉は、全てがでたらめで、一つたりとも本心はなかったのかな。
そんな軽い言葉に、私の心は、揺らされていたのかな。
最初のコメントを投稿しよう!