第七章 わかってしまった

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 先生は頭の裏をかきながら、部屋の真ん中の椅子にどかりと腰かけた。 「にしても、羽鳥。新年早々、なんか辛気くせえ顔してねえか?」 「気のせいじゃないですか? 私の不愛想は、今に始まったことではないです」 「まー、それはそうなんだけどよ。生物と戯れてんのに、浮かねー顔してる羽鳥は初めて見た」 「そんな、ことは」  ムキになって唇を尖らせたら、先生は私の手にしていた餌の瓶を指さしながら、なんともなしに言ってのけた。 「おい。それ、あげる餌、間違ってねーか? ヤモリにメダカの餌を与えたら、さすがにヤバいんじゃねーの?」 「えっ!?」  嘘!? 指摘されるまで、まったく気がついてなかった! 危うく、ヤモさんにヘンな物を食べさせるところだったよ……。  自分のあまりの不注意さに落ち込んでいたら、先生は、食い入るようにじいっと見つめてきた。 「おかしい、やっぱりおかしいよ。お前ともあろうものが、飼育している生物の餌を間違えて危うく死に至らしめるかもしれなかったなんて、不自然でしかない」
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