第七章 わかってしまった

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「うっ」 「なーんか隠し事してねえか? ほれ、先生に話してみ」 「先生に話す義理はないです」 「おいおい、かわいくねーな」  先輩への想いは、このまま、誰にも言わずに隠し通すつもりだった。  この胸の中にとじこめて、このまま、存在しなかったことにしようって。  だけど……。 「……ただ、人生で、初めての恋と失恋を経験しただけです。よくある話でしょう」  ずっと一人きりで抱えるにしては、重たくなりすぎていたようだ。  気がつけば、ぽつりぽつりと、今までの成り行きを話していた。  もちろん、人名は伏せて、誰のことだかはわからないように。  原先生に打ち明けられたのは、普段それほど関わりがないからこそなのだと思う。深くはない繋がりだからこそ、聞かせられる話もあるものだ。 「ふうん。失恋、ねぇ」
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