第七章 わかってしまった

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 赤いレンガ作りの洒落たマンションのエントランスで、百面相をしながら立ちつくす。  結局、先輩の家の前まで来てしまった。  ここまで訪ねてきて今更だけど、このまま突撃して良いものか。冷静に考えると、これって、かなりストーカーっぽいんじゃ……。  なんで学年が違うのに風邪で学校を休んだことを知っているのかとか、あまつさえ家の住所まで手に入れているのかとか……考えれば考えるほど、気持ち悪いと思われるんじゃないかという恐怖で足が地面に縫いつけられたようになる。  だけど、今日このプリントを渡さずに、後々先輩が困ることになったらそれはそれで責任を感じるし……。  なによりも、風邪の時に一人きりでいるのって、辛いんだ。健康な時にはなんでもない全ての行動がとっても大変で、しんどくて、寝る以外にどうすることもできなくて。  純粋に、心配でもある。  思考地獄におちいり悶々としていたその時、マンション内の住人がエントランスに降りてきて―― 「あ、れ……?」  ――巡りつづけていた思考回路が停止した。
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