第七章 わかってしまった

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 自動ドアの向こう側から、マスクを身につけたスウェット姿ですらカリスマオーラを隠しきれていない人物……もとい王子先輩が、おぼつかない足取りで現れたからだ。 「なんで……羽鳥、さんがここに……?」  心の準備をする前に当の本人に見つかってしまったことで、それまで考えていたことの全てが吹き飛んだ。 「それは後ほど説明させていただきます! それよりも、こんなにフラフラなのにどうして出歩いてるんですか!?」 「え……。家に、食べれそーなものがなんもなかったからだけど」 「買い物なら、私が行きます。顔まで、赤くなってるじゃないですか……。家で大人しく寝ていないとダメですよ!」  勢いに任せて、早口でまくしたてたら。  先輩は、小さな子供みたいにぱちぱちと瞳をまたたかせて、へらりと嬉しそうに笑ったんだ。 「うん……。ふふっ。ありがと」  っ。  違う違う。病人にときめている場合じゃないから!
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