第七章 わかってしまった

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 あまり物が置かれていないシンプルな部屋だけに、黒い楽器のケースらしきものが壁にたてかけられているのが目についた。  それにしても、見習いたいぐらいに整理整頓が行き届いている。 「あー……。やっぱり、だるい」  先輩はといえば、よろよろとした足取りで、そのままベッドの上にぽすりと倒れこんでしまった。 「先輩。なにか食べますか?」 「んー。やっぱり、まだ要らないや」  うとうとと、目をつむりかけている。  やってきたはいいものの、見守ることぐらいしかできないのが歯痒いところだ。先輩のお家で、あんまり勝手に動き回るわけにもいかないし。 「熱い……」  熱冷ましに、氷まくらでも用意してあげたら良いのかな。  目覚めた時に、さっと口にできる食べ物と飲み物があったら、嬉しいよね。  いったん買い出しにいってこよう。  思いたって立ち上がったら、ベッドの方から伸びてきた手に腕を掴まれた。 「まっ、て……。どこ、いくの?」
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