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「ウソ!? 嘘、嘘、嘘だよね!?!?」
慌てて飼育ケースに駆けよれば、いつも愛くるしい瞳で私を見つめてくれるかめきちの姿はそこになく、もぬけの殻となっていた。
「おお……いつも冷静沈着な羽鳥くんが、こんなに取り乱している姿は初めて見たよ。って、そうじゃなくて! 謝って謝りきれるものじゃないけど、それでも本当にスマないッッ」
ただでさえ白い顔を青くさせたメガネくんによれば、空腹に耐えきれなくなって生物室を無人にしてしまったらしい。お腹を満たして帰ってきたら、かめきちの姿が消えていたのだとか。
「生物室中を探しまわったんだけど、見つからなくて。もしかすると、換気のために開け放していた裏口から、外に出てしまったのかもしれない……」
メガネくんがおろおろとしながら何度も謝ってくるので、さすがに気の毒になってきた。
「謝らないで、メガネくんのせいじゃないよ。生物室を留守にしていた私が悪いし、そもそも、今までこういう事態を想定していなかったことが問題なんだから」
今まで大人しかったかめきちが、まさか脱走をしでかすなんて思いもよらなかった。
「もう起きちゃったことを、いくら嘆いても仕方がないよ。今後どうしていくかの方が大事でしょ」
「羽鳥くん……。君は、ほんとうに合理的だなぁ。感心するよ」
それって、なんだかけなされているような……。
だって、つまりロボットみたいだということでしょ?
「……嬉しくないなぁ」
「は?」
「ううん、なんでもない。かめきちを探してくるね! 私は外を探すから、メガネくんは校内を頼んだ!」
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