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彼は、固まった私の内心がこんなにも揺らされていることなど知る由もなく、すやすやと眠りに落ちていた。
「……先輩、ごめんなさい。迷惑だとわかっているんですけど、私、やっぱりあなたのことが好きみたいです」
とどめてはおけなかった想いが、唇からこぼれ出る。
眠った先輩から、返事はかえってこない。
「あなたのせいで、恋が、わかってしまいました。こんなに苦しいものなら、一生、わからないままでよかったです」
ここに来て、欠けた最後の一ピースは、先輩だったのだと確信してしまった。
だけど、もう、これでおしまいにしよう。
明日からは、この胸の痛みにも、気がつかなかったフリをする。
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