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ほとんど家の外に出ない鬱々とした冬休みを過ごしていたら、きわめつきに、高熱を出して年始の初っ端から学校を休むことになった。
「あー……ホントについてない」
両親ともに、今日も会社だ。
まぁ、高校生の息子が風邪をひいたぐらいで一々会社を休んでいられないだろうしな。看病してもらうといっても、病人は基本的に寝ているしかないのだし。
じゃあ、学校に行きたかったのかといえば、それも微妙なところだった。
登校したところで、もう、生物室に足を運ぶことはできないから。もちろん、羽鳥さんに会いにいくことも。
彼女にこれ以上の迷惑はかけられないから、みんなの前では『なんとも思っていなかった』と言ったけれど。そう口にした時、胸に今まで感じたことのないような鋭い痛みが走った。
嘘をつくことも、笑顔を取り繕うことも、今までの僕にとっては息をするのと同じぐらいに簡単なことだったのに。
「はぁ……」
いつもの数倍、身体が重たく感じる。足から鉛を引きずっているみたい。
全身が熱い。汗がしたたり落ちる。
羽鳥さん。
夢でも良いから、会いたいよ。
我ながらなんて未練がましいんだろうって思うけれど、冬休みの間中、ずっとそう思っていた。
でも、君はもう、僕の顔を見るのも嫌なんだろうな。
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