最終章 あふれる気持ち

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 原先生からプリントを押しつけられて、王子先輩の家を訪れた翌日。  学校に到着するなり、奇妙な噂が流れていた。 「王子先輩、風邪は治ったみたいだけど、なんか様子がおかしいんだって」 「えっ! 今度は何があったの?」 「今朝、女の子に挨拶をされても、ひたすら素っ気なかったんだってよ! 想像できないよねぇ」 「ウソウソ、あの王子先輩が!? 一言も話したことのない私たちの挨拶にすら、優しく応じてくれていたのに!?」  先輩が、女の子に対して、笑わなくなった……?  それは事件だ。 「おはよー、佳奈。今日も寒いねぇ」  もしかして、まだ風邪を引きずっていて、本調子じゃないんじゃ……。というか、後輩である私たちのクラスにまで、すでに先輩が昨日風邪だったことが当たり前のように共有されているのがさすがだ。 「かーなー? 聞・こ・え・て・る?」 「うわっ!? ご、ごめん。るり」 「ボーっとしてたけど、どうかした?」 「いや……なんでも、ないよ」 「あっ、嘘ついてる」 「えっ」 「なんでもない、って顔じゃない。あたしの目は誤魔化せないよ」  じーっと大きな瞳にのぞきこまれて、バツが悪くなる。
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