45人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ一時間目の授業が始まるまで時間があったので、人気のない空き教室に移動して、るりから話を聞くことになった。
彼女がうなだれながら語ったところによれば、王子先輩に、もう私とは関わらないでほしいと言ったらしい。
「佳奈にその気がないなら、先輩と関わっても辛くなる一方なんじゃないかと思って……。だけど佳奈、あの日からなんかぼーっとしてるし、冬休みに会った時も食欲なかったし」
もしも、その話が本当だとしたら。
王子先輩が、私のことを何とも思っていなかったと宣言したのも、本心ではなかったんじゃ。
雲間に一筋の光が射しこむように、今まで考えもしなかった可能性が見えてくる。
「……やっぱり、佳奈は、先輩のことが好きだった? そうだとしたら、あたし、最低だ」
震えながら蒼白な顔をしている親友の手を、勇気づけるように取った。
「ううん。るりは、私に良かれと思ったことをしてくれただけでしょ。そんなに自分を責めるような顔をしないで」
「でもっ」
「それにね、私も悪いの。強がりで、先輩に特別な感情はなかったって、るりに言っちゃったから」
るりが、小さく息を呑む。
最初のコメントを投稿しよう!