45人が本棚に入れています
本棚に追加
「教えてくれて、ありがとう。それに助けようとしてくれたことも。私ね……自分のせいで、先輩の評価を下げちゃうことが怖かったんだ。だけどね、いざ先輩は私のことを何とも思っていなかったんだって知ったら、想像以上に傷ついた。思っていたよりもずっと、この気持ちは大きいものだったんだって気がついたの」
先輩が、みんなからどう思われるかとか。
本来なら気にするべきことに、頭をひねる余裕もないぐらい。
「私は……王子先輩のことが、好き。先輩に、恋をしている」
言葉にしてみたら、今まで重しをのせられているみたいだった胸が、すっと軽くなった。
緊張が解けて、口元がほころんでいく。
一度認めてしまえば、抵抗していたことが嘘だったみたいに、前々から心の中にあった感情に思えた。
先輩のことが好き。
飾ることのない、ありのままの気持ち。
ぽかんと口を開いていたるりも、私につられるようにして目元を和らげた。
「佳奈から、そんな台詞を聞ける日がくるなんて」
「ちょっと、るり。なんで、涙ぐんでるの」
「だってっ……。嬉しくて」
この後、るりから散々あれこれと聞き出されていたら、授業に遅れてしまった。でも、一時間目は物理で原先生の授業なので『遅れても、まぁいっか』と思っていた節もあり、半分ぐらい確信犯であったことは二人だけのひみつだ。
最初のコメントを投稿しよう!