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お昼休みになった瞬間、いてもたってもいられなくなって、真っ先に二年生の教室に向かった。
身体が、芯から燃えているみたいに熱い。
ものすごく大胆なことをしようとしているはずなのに、不思議と怖くはなかった。明日あたりに、冷静になった自分が、今の私の行動を思い返して穴に埋まりたくなっている可能性はあるけれど。
「もしかして、あの子って、王子くんと一瞬だけ噂になってた子じゃ」
「王子くんに用があって、ここまで来たのかな」
「うわ。めげないなー」
二年の先輩たちのひそひそ声も、さほど気にならなかった。
今の私を衝き動かすものは、王子先輩に会いたい。
周りも目に入らなくなるほど、ただ、その一心だったから。
「羽鳥さん!」
がたりと席を立ちあがった彼が、迷いもせず私をめがけて走ってきた時、心がふわりと浮かび上がった。
「えっと……その。このクラスの誰かに用だった?」
「はい。先輩に用事があって、来ちゃいました」
王子先輩は、驚いたというように瞳をまるくしたあと。
「ちょうど良かった。僕も、君に伝えたいことがあったから」
ふわりと、まるで花が咲いたみたいにやさしく笑ったんだ。
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