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鼓動の音が交じり合ってしまいそうなほど、先輩が近くにいる。距離の近さを意識すればするほど、顔がゆだるように熱くなっていく。
「というか、先輩、いまなんて言いました!?」
私の聞き間違いでなければ、『僕の方から言うつもりだったのに』と聞こえたような。
彼は、私を抱きしめる力をゆるめて、今度は間近で顔をのぞきこんできた。
その瞳は、うるんでいて。
頬も、朱く上気していた。
先輩が、私しか目に入っていない、というような顔をしている。ただでさえ跳ね上がっていた鼓動が、どんどん追い立てられていく。
「僕も、羽鳥さんのことが好き。君に、恋をしている。もう、けっこう前からずっと」
今度は、私が瞳を見開く番。
「ずっとね、笑いたくもないのに愛想を振りまいてた。人の好意を無下にして悲しい顔をされると、自分が悪者になったような気がして……」
彼が、身体を小刻みに震わせながら、熱い吐息を漏らす。
恐れているのだろう。
誰だって、弱い自分をさらけだすのには、とてつもなく勇気がいる。
「先輩、震えてます。落ち着いてください」
あなたが、私の弱さを広い心で受け止めてくれたように。
今度は、私が受け止めるから。
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