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「……ふふっ、ありがとう。うん。つまるところ、僕は、人に優しいようで本当は誰のこともどうでもいいと思っていたんだろうね。自分が、一番かわいかったから」
そう思っていたくせに、それが災いして同姓からは疎まれるなんて、情けないことこの上ないね、と先輩は自嘲気味に笑った。
「だけどね、羽鳥さん。やっと、たった一人だけを特別にしたいって気持ちがわかったんだ。君が、気づかせてくれたんだよ」
王子先輩は、誰もが見惚れるような、きらきらとした笑顔を浮かべていて。
この笑顔が、他でもない私に向けられているものなのだと思ったら、痛いほどに胸が高鳴った。
「羽鳥さんの、そばにいたい。もっと笑顔を見たい。君だけを大事にしたい。そっか、これが恋なんだなって思ったんだ」
まさか、先輩も同じ気持ちだったなんて。
夢みたいだ。
目頭がどんどん熱くなる。
感極まって、瞳からつるりと涙がこぼれた。
「えっ……。は、羽鳥さん!?」
あれ。
私、泣いている?
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