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次から次へと、熱い涙が顔にぼろぼろと落ちていく。
そっか。
そういうことだったんだ。
「……ふふっ」
涙を流しながら、笑い声を漏らした私を、先輩が戸惑ったように見つめかえす。
「初めて、知りました。私の涙は、嬉しくて仕方がない時に流れるみたいです」
自分でも、知らなかったな。
泣けなくて苦しんでいた昔の私に、教えてあげたい。
大丈夫。
あなたはいつか、胸を震わせるほどの幸せな涙を流すからって。
「羽鳥さん」
「なんですか?」
首を傾げたら。
唇に、やわらかいものが触れた。
「いきなり、ごめんね。かわいくて、つい」
羽根のように軽いキス。
だけど、その威力は充分すぎるほどで。
瞳をそらした先輩が耳まで真っ赤にしているのに負けないぐらい、私の顔も真っ赤になっていたと思う。
「あの……今さらですが、羽鳥さん。僕と、お付き合いしてもらえますか?」
そんなの、答えは一つしかないよ。
「もちろんです。よろしくお願いします、王子先輩」
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