最終章 あふれる気持ち

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 *** 「あーあ。まさか、恋愛事情で佳奈に先を越されるなんて、予想もしてなかったよ。しかも、相手が、この学校の王子だなんて……このこのーっ、幸せ者め!」 「坂本くん、無駄話をしている暇があったら、きびきびと動いてくれないか? ほら、みんなも早く僕らの住処を掃除してほしいと嘆いているぞ!」 「メガネって、マジぶれないよねー。あの王子先輩に彼女ができたってだけでも星燐高校の特大ニュースなのに、その相手が、なんと我らが佳奈なんだよ? 驚けとは言わないけど、せめてリアクションはしろっつーの」 「別に、驚くほどのことでもないだろ。羽鳥くんを見初めたあの先輩に、思いのほか見る目があったというだけだ」  えっ?  メガネくんの聞き捨てならない発言に、ぎょっとしてしまったら。 「メガネくん。いま、さりげなく僕の彼女を口説こうとしていなかった?」  どこからともなく現れた王子先輩が、口元をひくつかせながら、メガネくんをジト目で見つめていて。 「ち、ちがう! 別に、そういうつもりではなくてだな! 羽鳥くんは良い子だし、いつも先輩を取り囲んでいた有象無象よりも、よっぽど魅力があると言いたかっただけで」 「メガネ、墓穴ほってるよ。その辺でやめときなって、王子先輩とアンタとじゃゾウと蟻なみに戦力差があるんだからさ……」 「ぐぬぬぬ」 「あの、どこからつっこめばいい?」 「うん? 羽鳥さんは、僕だけを見ていれば良いよ」  ……ほお。  あきれたような顔をしながらも、この賑やかさが心地良いと思っている時点で、私もだいぶ先輩にほだされているような気がする。
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