45人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
日の光を浴びて輝く金髪に、色素の薄い瞳。
まるで、神さまが寵愛するために作った人形のように、整った容貌。
普通ならコスプレにしか見えないであろう執事服を、あまりにも自然にかっこよく着こなしている彼には、見覚えがあった。
この鮮烈な輝きは、一度見たら、忘れられない。
王子先輩だ。
けれども私は――目の前に噂の先輩が立っているということ以上に、彼の腕にかめきちが捕獲されていることの方に驚いた。
「……かめきちぃぃぃ!!」
ああ、良かった! 無事だったんだ!!
「もーー、なんで脱走したりするの~っ。誰かに踏みつぶされていたらどうしようって、気が気じゃなかったんだからね!?」
先輩に抱かれているかめきちは、騒ぐ私をぼうっと見つめている。自分がしでかしたこともわかっていないのだろう。呑気な子だ。
「はぁ、寿命が縮まった気がしたよ。でも、無事で本当によかったぁ」
かめきちに目線を合わせながら笑いかけると、こくりとうなずいてくれたような気がした。
「こほん。……つまり、君が、この子の飼い主ということだよね?」
はっ!
かめきちとの再会を喜ぶあまり、王子先輩の存在を空気にしてしまった!
「あっ、はい。まぁ、そんなところです」
慌てて返答したものの、なんともいえない沈黙が落ちる。
心なしか、先輩にじいっと見られているような。
居心地が悪い。
亀に愛称をつけてかわいがっているなんて、ヘンな子だと思われているのかも。
それでも、かめきちを拾ってくれたことに関しては、きちんとお礼を言わねば。
「かめきちを拾っていただいて、ありがとうございました」
最初のコメントを投稿しよう!