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いちおう私もお世話になったのでぺこりと頭を下げたら、先生はニタリと笑った。
「良いってことよ。青春しろよな!」
生物室の中に、王子先輩がいる。
みんなの王子さまだった彼が、当たり前のように、私のそばにいてくれる。
「ん? どうかしたの、羽鳥さん。僕の顔、なにかついていた?」
私には、人間らしい心がないとふさぎこんでいた時期もあったけれど。
先輩は、そんな私の心を見つけてくれた。
恋を、教えてくれた。
身体の真ん中から、好きだという気持ちがあふれてくる。
「違います。ただ、先輩のことが好きだなぁ、と思っていただけです」
「えっ!?」
あっという間に顔中を真っ赤にした彼のことが、愛おしくて仕方がない。
そんな私たちを、微笑ましい瞳で見守ってくれている、みんなのことも。
「佳奈ったら、自覚した途端に積極的なんだから」
だって、何度でも伝えたいんだもん。
恋とは、一生縁がないのだろうと思っていた。
だけど今は、そんな風に思っていたことの方が懐かしい。
ねえ、先輩。
まだ、始まったばかりの恋で、これから喧嘩だってするのかもしれない。
でもね、これが最後の恋だったら良いって、私、本気で思うんだ。
先輩が、王子さまみたいにかっこういいからじゃないよ。
やさしくて、聞き上手で、実はちょっと情けない。
先輩が、先輩だったから、私はあなたに恋をしたの。
これからは、私だけの王子さまでいてくれますよね? 先輩。
【王子先輩は恋愛音痴な私がお気に入り 完結】
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