後日談 ハッピーバレンタイン

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 王子先輩の話を聞いていると、誰にも邪魔されずにひっそりと暮らせることや、注目されないことにもありがたみを感じる。  私にとっての当たり前は、誰かにとっての当たり前じゃない。  理屈では分かっているつもりだったことを、本当の意味で知る。  これも、王子先輩を好きにならなかったら、考えもしなかったことだろう。 「あぁ、そっか。でも、それを聞いて安心したな。羽鳥さんには、怖い思いなんてしないで生きてほしいから」 「先輩は私に甘々ですね」 「うん。大好きだよ、羽鳥さん!」 「…………」 「スルーはやめてくれる?」 「先輩にとって、もう少し、生きやすい世界になってほしいです。先輩のせいじゃないですし、難しいのかもしれませんけど」  照れ隠しで、遠まわしな言い方になってしまった。  だけど先輩は機嫌良さそうに微笑んだ。 「ありがとう。でもね、これからは、以前よりはマシになっていくと思うんだ」 「そうなんですか?」  王子先輩は、意味ありげに、じいっと私を見つめてきた。  それから、にこりと幸せそうに笑った。 「うん。だって、彼女持ちになったから」
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