45人が本棚に入れています
本棚に追加
王子先輩の話を聞いていると、誰にも邪魔されずにひっそりと暮らせることや、注目されないことにもありがたみを感じる。
私にとっての当たり前は、誰かにとっての当たり前じゃない。
理屈では分かっているつもりだったことを、本当の意味で知る。
これも、王子先輩を好きにならなかったら、考えもしなかったことだろう。
「あぁ、そっか。でも、それを聞いて安心したな。羽鳥さんには、怖い思いなんてしないで生きてほしいから」
「先輩は私に甘々ですね」
「うん。大好きだよ、羽鳥さん!」
「…………」
「スルーはやめてくれる?」
「先輩にとって、もう少し、生きやすい世界になってほしいです。先輩のせいじゃないですし、難しいのかもしれませんけど」
照れ隠しで、遠まわしな言い方になってしまった。
だけど先輩は機嫌良さそうに微笑んだ。
「ありがとう。でもね、これからは、以前よりはマシになっていくと思うんだ」
「そうなんですか?」
王子先輩は、意味ありげに、じいっと私を見つめてきた。
それから、にこりと幸せそうに笑った。
「うん。だって、彼女持ちになったから」
最初のコメントを投稿しよう!