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身体の真ん中に火を灯されたみたいに、全身でドキッとした。
「え、えと……そう、ですね?」
「ふふ」
「あ、あんまり、見ないでください」
「どうして?」
「どうしてもです!!」
「えーっ? 相変わらず、羽鳥さんは僕に冷たいなぁ」
今は、少し前までと違って、本当にうっとうしく思っているわけじゃない。
単に、恥ずかしくて素直になれないだけ。
想いを自覚した直後は若干ハイになっていた気がするけど、冷静になると、恋人らしいやり取りにはまだまだ慣れないことが多い。
「まぁ、そんなところも好きだけどね」
「……ありがとうございます」
「目、泳いでる。もしかして照れてるの?」
「っ。うるさいですよ!」
「怒らなくても良いのに」
言葉では拗ねているけれど、口角はどことなく上がっている。上機嫌そう。
私を見下ろす瞳はやさしさに満ちていて、なんだか、そわそわとする。
「なんだかすごく幸せだなぁ」
「急にどうしたんですか?」
「んー? こうして君と一緒に帰れることがすごく嬉しいんだ」
もう、降参! とばかりに心臓が音をあげそうだったけれど、このままやられっぱなしはなんだか悔しい。
だから、なんとかこらえて、先輩を見つめかえす。
「そうですね。私も、先輩と並んで歩けること、嬉しいと思ってます」
この後、ゆでだこみたいに赤くなった先輩が、少し経ってから「ねえ! 今の、もう一回言って!!」としつこかったことは言うまでもない。
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