第二章 学園の王子さまは私の愛亀に夢中

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 かめきちが脱走するというプチハプニングが起こった文化祭が幕を閉じてから早一週間。十月も下旬になった今では、校庭にそびえたつイチョウが黄金に色づいている。 「もう脱走したりしたらダメだよ?」  プチトマトを分け与えながら、目を見て、言い聞かせる。  あれから、かめきち用にもっと高さのある飼育ケースを購入しにいった。そのおかげで貯金は削れたけれど、満足している。これでもう脱走はできないだろう。 「狭いところに閉じこめてごめんよ。その分、天気が良い日はたくさん日光浴をさせてあげるからね」 「亀って、会話はできないよね?」 「私のかめきちはお利口さんだから、ちゃんと伝わっているよ。ねー?」 「……亀バカだ」 「なにかいった?」  トントントン!  るりといつも通りの会話をしていたら、いきなりノック音が生物室に響きわたった。 「誰だろう? もしかして、せんせー!?」  ぱあっと顔を輝かせて、扉をあけにいったるりの前に現れたのは……、 「こんにちは。いきなりお邪魔して申し訳ない。生物部は、ここかな?」  王子先輩!?
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