第二章 学園の王子さまは私の愛亀に夢中

3/20

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
 るりですら、彼の神々しいオーラにあてられて、カチコチに固まっている。  それまで餌やりに励んでいたメガネくんが、興味を示したように立ち上がった。 「おや? 見ない顔だけれど、もしかして入部志望者かな?」  さすがはメガネくん。  王子先輩を相手に動じていないどころか、そもそも知らないとはね。まぁ、私も人のことをとやかく言える立場ではないけれど。 「あ、あの。なにか用でしょうか?」 「うん。実はね、今日は亀に会いにきたんだ」  ……うわぁ。  るりが、貼りつけたような笑顔で私に振り向く。その顔には『なにも説明されていないけれど、一体どういうこと?』と書いてあった。 「突然来ちゃったし、無理にとは言わないけど。入っても大丈夫かな?」 「も、もちろんです! 部員はこの三人のみで、見ての通り、暇を極めていたところですから!」  るりってば、なに勝手に許可してるの!? 「ありがとう」  王子先輩は口元をほころばせながら、真顔を貫く私の隣へとやってきた。 「一週間ぶりだね?」 「……そうでしたっけ」 「えっ。まさか、僕のことを忘れてる?」 「さすがに、そこまで記憶力悪くないですよ」  思わずしかめそうになった顔を、なんとか取り繕う。  ああ。なんで、またこの人と会話をしているんだろう。もうあれきり関わることはないと思っていたのに。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加