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るりですら、彼の神々しいオーラにあてられて、カチコチに固まっている。
それまで餌やりに励んでいたメガネくんが、興味を示したように立ち上がった。
「おや? 見ない顔だけれど、もしかして入部志望者かな?」
さすがはメガネくん。
王子先輩を相手に動じていないどころか、そもそも知らないとはね。まぁ、私も人のことをとやかく言える立場ではないけれど。
「あ、あの。なにか用でしょうか?」
「うん。実はね、今日は亀に会いにきたんだ」
……うわぁ。
るりが、貼りつけたような笑顔で私に振り向く。その顔には『なにも説明されていないけれど、一体どういうこと?』と書いてあった。
「突然来ちゃったし、無理にとは言わないけど。入っても大丈夫かな?」
「も、もちろんです! 部員はこの三人のみで、見ての通り、暇を極めていたところですから!」
るりってば、なに勝手に許可してるの!?
「ありがとう」
王子先輩は口元をほころばせながら、真顔を貫く私の隣へとやってきた。
「一週間ぶりだね?」
「……そうでしたっけ」
「えっ。まさか、僕のことを忘れてる?」
「さすがに、そこまで記憶力悪くないですよ」
思わずしかめそうになった顔を、なんとか取り繕う。
ああ。なんで、またこの人と会話をしているんだろう。もうあれきり関わることはないと思っていたのに。
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