第二章 学園の王子さまは私の愛亀に夢中

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 私の気など知らずに、王子先輩はマイペースに話しかけてくる。 「それにしても、こんなに高さのあるケージから、どうやって脱走できたの?」 「これは新調したものなので。以前はもう少し背の低いものを使っていました」 「なるほどね」  聞かれたことだけに、淡々と答えるスタイルを維持。だけど先輩は、私の失礼な態度を気にした様子もない。 「亀って、どちらかというとのろまなイメージがあるじゃない? だけど、脱走とかしでかしちゃうぐらいパワフルなんだね。意外だなぁ」 「実は素早いんですよ。うちのかめきちはリクガメなので、これでものんびりとしている方ですけど、ミズガメはもっと機敏です」 「そうなんだ」  ケージをのぞきこみながら、感心したようにうなずく先輩。かめきちも、彼の驚くほど整った顔に興味があるのか、じっと見つめている。 「ところで、先輩は、何をしにここまでやってきたのですか」 「さっきも言ったでしょ? この子に会いたかったんだよ」  ふむ。  どうやら、王子先輩は、かめきちの虜になってしまったらしい。  かめきち、お前ってやつは罪な子だなぁ。  正直、厄介なことになりそうだから、あまり関わりたくはないけれど。  かめきちに惚れたと言われて、悪い気はしない。  亀好きに悪い人はいないもんね。 「それと、飼い主の君にも」  ……チャラいところは(きず)だけど。
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