第二章 学園の王子さまは私の愛亀に夢中

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 先輩の唇には、女子を見ると口説かずにはいられない呪いでもかかっているのかな。 「くだらないことを言いにきたのなら、今すぐに帰ってください」  彼はぱちぱちと瞬きをして、口の端をつりあげた。 「……やっぱり、面白いなぁ」 「はあ? なにがですか」 「ううん、こっちの話。ねえ、僕もかめきちに餌をあげても良い?」  王子先輩は、かめきちに餌やりをできたことでやっと満足したらしい。 「突然だったのに、今日はありがとう! また来るね」  先輩を見送りながら、『ようやく帰ったか』と思ってしまったのはひみつだ。  あれ? さっき、また来るって言っていたような……。いやいや、気のせいだよね。  王子先輩が帰った瞬間、それまで息をひそめていたるりとメガネくんが大騒ぎしはじめた。 「ちょっと佳奈! 今のは、どーーゆーことかなぁ?」 「羽鳥くん!! さっきの彼、やっぱり生物部に興味がありそうじゃないか! 折角の勧誘のチャンスだったのに、あんなに素っ気ない態度をとるなんて、どういうつもりなんだい!」  あー……めんどうくさ。
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