第二章 学園の王子さまは私の愛亀に夢中

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 ✳︎✳︎✳︎  おかしい。 「わぁ。亀ってカボチャも食べるんだね」 「ちょっと王子先輩。うちのかめきちに勝手に餌をあげないでくれませんかね」 「ごめんごめん。この子が物欲しそうな顔をしていたから、ついね」  なぜ当たり前のように、王子先輩が生物部にまぎれているのだろう。 「最初は、地味でせまーいこの部室に王子先輩を滞在させること自体がなんだか申し訳なかったけど、ちょっと馴染んできてますよね」  王子先輩は先週の『また来るね』という言葉通り、放課後になると頻繁に生物室を訪れるようになっていた。 「ええー。坂本さんの中での僕のイメージ、なんかやだなぁ」 「大体の生徒が、るりと似たようなことを思っていそうですけどね」  とびきりかっこいいけど、話してみると気さくで、物腰柔らか。  うん。並べてみると、女子が惚れそうな要素しかない。  チャラいのは玉に瑕だけど、先輩の場合、『特別は作らない』という歯の浮きそうな台詞ですら『王子くんになら遊ばれていてもかまわない!』と言い出す女子を大量生産してしまうのだとか。現代の光源氏かよ。 「じゃあ、羽鳥さんの中での、いまのところの僕の印象は?」 「名乗った覚えはないのですが、いつの間に私の名前を?」 「メガネくんがそう呼んでいたから。それとも、坂本さんみたいに、佳奈と呼んでも良かった?」 「断固として拒否します」 「そんなに嫌そうな顔をしなくても良いじゃん……。傷つくよ?」 「はいはい。悲しそうな顔をするのがうまいですね」 「本当に悲しんでいるんだけどな」
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