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「ふーん。そういうものなんだ」
「反応うっっっす! 毎度のことだけど佳奈って恋バナにまったく興味ないよねぇ。華の女子高生なのにさぁ」
「うーん。別に、女子高生の全員が、恋愛に価値を見出すわけではないと思うけどな」
「えー、そう? そういうものかなぁ」
るりは納得しきれない様子で頬杖をついた。
「……もしかして、佳奈にとっては、あたしの真ちゃん話って実は退屈?」
今度は、茶色の髪を指に巻きつけながら、うかがうように私を見つめてくる。
ここで不安を抱かれるのは、中学時代からの親友として心外だ。
「ううん。面白いよ」
「ホントウに?」
「うん。正直、恋についてはよくわからないけど、るり心底楽しそうだし」
思ったままのことを口にしたら、彼女はいきなり口元をおおった。
そうかと思えば、次の瞬間、私は思いっきり抱きつかれていた。
女の子らしい甘い香りが鼻をくすぐる。
「~っ。あたし、佳奈のことも真ちゃんに負けないぐらい大好きだからね!」
「はいはい」
坂本るり。
私の親友は、恋に一生懸命なかわいい女の子。
彼女の恋は、ちょっと普通ではない。
先ほどからナチュラルに『真ちゃん』と呼ばれている彼、原真司郎は星燐高校の物理教師だ。私たちが所属している生物部の顧問でもある。
るりにとっては、近所のお兄さんで、幼馴染のような関係らしい。
そうはいっても、生徒と教師だ。
恋愛事にうとい私でも、難しい恋であるとわかる。
るりは、叶わないかもしれない恋に、どうしてここまで心を傾けられるのかな。
私、羽鳥佳奈には、親友の気持ちがわからない。
「るりは、すごいよね。……私には、そういう気持ち、わかる気がしないなぁ」
そもそも、少女漫画や恋愛小説を読んでも、ピンときた試しがない。ドキドキもしなければ、憧れる気持ちすらわいてこなかった。
私には、人らしい心というものが、すこし欠けている自覚がある。
「すごいっていうか……気がついたら、好きになってただけだよ。きっと佳奈にも、そういう瞬間がやってくるよ」
照れくさそうな親友はきらきらとしていて、遠い存在に思えた。
こんな私は、恋とは、一生縁がないのだろう。
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