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「君の言う通りだよ。生き物たちも、怯えきってしまっている。謝ってすむような話でもないけど、本当にゴメン」
メガネくんの前に立ち、深く深く、頭を下げる。
それまで額に青筋を立てていたメガネくんも、先輩のひたむきな謝罪に毒気を抜かれたようで、返す言葉をうしなっていた。
「迷惑、だったよね」
顔をあげた先輩は、頬をかきながら困ったように笑ったけれど。
今にも泣きそうに見えたのは、私の気のせい?
「じゃあね。怒ってくれて、ありがとう」
メガネくんの返答を待つこともなく、王子先輩は生物室を出ていった。
「……ええと。ごめんなさい?」
他の女子たちも、彼を追いかけるようにして生物室を飛び出していく。
その様を見届けたメガネくんは、大きく息を吐きだした。
「久しぶりに大きな声を出したから、今日はもう疲れたよ」
「うん」
「やっと、生物室に平和が戻ってきたなぁ。ようやくまともに活動ができるよ」
「……うん、そうだね」
そう。
この静けさこそが、私の求めている平穏だ。
そのはずなのに、このもやもやとした気持ちはなんなのだろう。
「羽鳥くん、どうかした?」
「ううん。ただ、ちょっとね」
「ん?」
「いや、なんでもない」
「歯切れが悪い羽鳥くんなんて珍しい」
喉に魚の骨がつかえているみたいな違和感。
あぁ、そうか。
私は、王子先輩が悪いことをしたわけではないのになぁって思ったんだ。
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