第二章 学園の王子さまは私の愛亀に夢中

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 できる限り、迷惑はかけたくないな。  そんな弱気な思考がよぎって、つい、全身が余計に力んでしまった。 「あっ」  バランスを崩した身体が、宙に浮く。  次の瞬間、膝に焼けるような痛みが走った。  痛っ! 「おいおい、転んでんじゃねーよ」 「あーー、良い順位だったのにぃ」 「佳奈! 大丈夫!?」  遠くで、私の転倒が物議をかもしている。  やってしまった……。  無理をしなければ、ここまでの醜態はさらさなかっただろうに。  擦りむいてじくじくと痛む膝を抱えながら、どうにか立ち上がる。  それまで最下位だったクラスにも抜かされたけれど、痛みが酷くてもうそれどころではなかった。  力を振り絞ってなんとかバトンを繋いだら「お疲れさま。膝、お大事にね」と次のランナーが気遣ってくれたので、すこしだけ報われた気がした。
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