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「うわぁ、大丈夫? めっちゃ痛そう……」
うずくまっていたら、血相を変えたるりが水場まで連れていってくれた。染みるのをこらえながら傷口を洗い流して、今度は保健室の前へ。
「ごめん、佳奈! このまま付き添ってあげたいんだけど、あたし、そういえばこの次の種目も出番だ」
「良いよ、気にしないで。むしろ、忙しいのにありがとうね」
「ううー、心配だよ。傷口深そうだから、ちゃんと手当てしてもらってね」
るりは何度もこちらを振り返りながら、校庭の方へと戻っていった。
ひりひりと痛みつづける膝を見下ろせば、気が滅入るような赤い血が流れている。
はぁ……。やっぱり、体育祭なんて嫌いだ。
うつむきながら、保健室の扉をノックする。
しーん。
返事がない。
もしかして、誰もいないのかな?
「あのー。失礼します」
疑問に思いながら戸を開けば、薬品の独特な匂いが鼻をツンと刺激した。洗いたてのような真っ白のカーテンが、ひらひらと揺れている。
いつもなら、保健室の先生が出迎えてくれるんだけど、ちょうど席を外しているのかな。
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