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それなら、仕方がない。
救急箱をお借りして、適当に処置しておこう。
「うわっ! ひどい怪我じゃないか!」
「へっ」
驚いた。
だって、誰もいないと思っていたのに、急にベッドの方から声がしたから。
「大丈夫? いや、どう見ても大丈夫ではないよね」
ベッドから飛び降りてきて、目の前に現れたのは――
「転んだの? すっごく痛そう」
――さえぎるもののないお日さまのように、美しい彼だった。
「王子、先輩」
メガネくんの堪忍袋の緒が切れたあの日から、ぱったりと生物室に顔を見せなくなったので、会うのは数週間ぶりだ。
久し振りに目の当たりにする先輩は、相変わらずかっこいい。
だけど、なぜか、ジャージではなく制服姿だ。
「立っているのも辛いでしょ? 早く、ここに座って」
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