第一章 恋とは一生縁がないのだろう

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 るりと一緒に教室を出て、昇降口に向かう。  その途中、教室いっぱいにブルーシートを広げて、みんなで作業しているクラスを通りがかった。 「わー、二組はもう文化祭の準備をはじめてるんだね」 「たしかお化け屋敷をやるんだっけ? すごいね、気合いが入ってるなぁ」  期末試験が終わったので、校内は、一ヶ月後の文化祭モードになりつつある。  今日のホームルームで、私たち一年三組は演劇をやることに決まった。  私はといえば、すぐさま裏方を志望した。  目立つことは苦手だ。というか、日常生活においても表情に乏しい私に、演技なんてできるわけがない。  一方で、るりは演劇チームに抜擢されていた。  本人にその気はなかったみたいだけど、『えー! そんなこと言わずにやってよ~! 坂本さんかわいいから、華やかな衣装とか似合いそうだし!』とクラスメイトに頼みこまれて渋々うなずいていたっけ。  目立つほどかわいいというのも大変そうだ。  階段を下りていき、昇降口にたどりつくと、下駄箱のある一角に不自然な人だかりができていた。  群がっているのは、全員女子……?  不思議な光景に足を止めたら、隣のるりも、感心したように目を丸くしていた。 「うわぁー。王子(おうじ)先輩、今日も今日とてすごいハーレム状態!」  王子先輩? 「王子くーーん! ねえ、今日こそわたしと遊んでくれるでしょ?」 「ええーっ! 王子くんはアタシと遊ぶ予定なんですけど!」 「アンタたち、邪魔よ! 王子くんが困っているでしょう!?」  女子生徒の黄色い声の中から、男の人の声がした。 「ゴメンね、みんな。通れないから、ちょっとそこをどいてもらっても?」 「「きゃーーっ!」」  その人は、モーゼが海を割るかのごとく、女子の群れの中から姿を現した。
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