間章その1 王子さまの知られざる苦悩

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「王子くん! あたし、教科書忘れちゃったんだけど、良かったら見せてもらえない?」 「あっ、抜け駆けズルーい! ってゆーか、教科書忘れたって、嘘じゃん! ホントは持ってきてるけど、王子くんに見せてほしいだけでしょ?」 「えへ、その通りー! そしたら、眠い授業も頑張れるかもぉ?」  クラスの女子に近づいてこられた時、甘ったるい香水の匂いが鼻についたので、本人に気づかれないようにさりげなく距離を取った。 「あー……ごめんね? これ以上、先生に目をつけられたらさすがにマズいから、しばらくは真面目に授業を受けようと思ってるんだ」 「えー、ツレない~」 「ごめんってば」 「じゃあ、その代わりに今度の放課後遊んでくれる?」 「んー。考えとくよ」  適当に笑顔を取り繕ったら、彼女はうっとりとした顔をして引き下がった。  はぁ……やっとあきらめてくれた。
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