間章その1 王子さまの知られざる苦悩

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 隣の席の女の子に教科書を見せるのは危険だと、これまでの経験から散々思い知らされている。  純粋な善意から、教科書を見せやすいように机と机をくっつけたが最後、彼女たちは何をしでかすかわからない。こっちは真面目に授業を受けたいのに、なにかとちょっかいを出される羽目になるのだ。  じいっと穴があきそうなほど見つめられたり、つんつんと小突かれたりするのはまだかわいいほう。太ももの上にそっと手を載せられた時には、さすがに悲鳴を上げそうになった……。  あれって、よく考えなくてもセクハラだったよなぁ。  ちなみに、先生から目をつけられたというのも、それが原因。  強面の数学教師から『授業中にイチャつくな』と、僕の方がキレられた。それはむしろ僕の台詞だったけれど、真実を話して女の子を糾弾するのも気が退けて、ぐっと堪えた。理不尽だ。 『王子くん……あたしのせいで、ごめんね?』  女の子の涙って、ズルい。  そんな顔をされたら、強く言えないじゃないか。
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