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「あれ!? 王子くん、どこ行った?」
「さっきまで、教室にいたよね?」
「おっかしいなぁ……一緒に帰りたかったのに」
疲れて一人になりたい時は、男子トイレの個室で、息をひそめるほかない。
「ひゃははっ。王子、まーた、女子たちからかくれんぼしてんの?」
「あーあ。俺も人生で一回ぐらいは、困るほどモテてみてえなぁ」
そのせいで、男子からは笑われるわ、嫉妬されるわで散々だ。
他人事だと思って、適当なことを言いやがって。
代われるものなら、代わってくれよ。
自分で言うのもなんだが、僕、王子慧は昔から異様なほどモテる。女の子たち曰く、甘いマスクで整った顔立ちなのだとか。
なにも考えずに過ごしていた中学時代は、思い出すだけでも眩暈がしてくるほどガチ告白の嵐だった。
断って泣かれるたびに、自分が悪者になったかのような罪悪感にかられた。思い出すだけでも、息苦しい毎日。
その苦々しい失敗を踏まえて、高校に入ってからは、軽薄そうな軟派キャラにおさまろうと決意した。
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